今朝の茨城新聞への寄稿「国家の舵取り構築の年」です。ご一読下さい。
「茨城論壇」「国家の舵取り構築の年」
総選挙一色となる日本だが、国家の舵取りが国の存亡に直結する状況にあることの認識が必要である。国際紛争の同時多発と変幻自在のトランプ大統領により、世界全体が動乱化しているからである。日本の失われた30年を挽回するためにも、国家戦略を立案し、国家の舵取りを担う政治改革が急務である。
私は、英国の議員などとの交流から、日本は英国の議会制民主主義の制度は導入したが、その実体は大きく異なっていることを学んだ。以下のように実体を制度に近づけることが改革の第一歩と思う。
第一は英国の「議会権限」である。
① 「英国の首相は自由な解散権を持つ」という日本での学説は妥当ではない。首相解散権にはさまざまな制約がある。議会や与党も制約力を持つ。カナダやニュージーランドも含め任期満了選挙が大多数である。国会が解散を制約する手段を持たないのは日本だけである。解散は政治空白を生み、総選挙の頻発は頻繁な首相交代に繋がり、国際的な信頼を損ねている。
② 英独仏では、政府作成の法案は全ての国会議員に同時に提出され、国会で修正を行う。日本だけは与党議員のみで事前審査を行い、国会提出前に法案が実質決定される。国会は追認機関と化した。
③ 下院議長は完全中立で、法案修正要求の権限も持つ。
以上指摘した日本の国会権限の不在、国民主権の不在と言え、民主主義の基本の否定と言える。
第二は「金のかからない選挙」である。議会が設立した選挙委員会は規制力があり、立候補者の支出上限の違反には重い罰則を科せる。違反した議員は政治生命すら失う。総務省傘下の日本の選挙管理委員会には規制力がない。日本では支援団体などの地盤に多額の金を要することが「政治と金の問題」の根底にある。自民党議員の3割以上が地盤継承による世襲である。
第三は「若者が落選しても社会復帰がしやすい社会」である。会社やNPOなど元の職場に復帰しやすく、議員活動は社会貢献の一つである。日本でも近年若者の政治意識が高まっており、政治参加の環境を整えるべきである。
第四は「政治家と官僚の接触制限」と「政治家とメディアの接触制限」で、公務員の政治的中立と政治の透明性を支える。野放図な日本は官僚主導・忖度文化が根強い。
日本の国会では、定数削減や選挙制度改革がテーマになっているが、これらよりも、以上述べた実体の改革が先である。これには憲法改正は不要で、国会法や議院規則などの改正で対応できる。また定数削減などは政党間の利害対立となるが、実体改革は議会制民主主義の本来のあり方に近づけるもので、反対する政党は少ない筈である。
日本の首相の国会での拘束時間が長いのも国益に反する。首脳外交や政策立案に傾注できる支援が必要だ。中国やインドも含め、世界の主要国は議会やNPO等も駆使した多層外交を強化している。関税戦争とは昨日の友が敵となる争いでもあり、合従連衡が増大した。国会が弱く、外務省オンリーの外交ではしたたかな諸国と対峙できない。
外交・安保に限らず、経済、社会保障などの国家戦略立案や危機管理を含めた国家の舵取り体制の確立が急務である。官主導ではなく、戦後のアジアとの和解などを先導した経済人や、先進諸国が持つ独立した行政監察機関や財政検証機関、国会傘下のシンクタンクの創設なども含めたオールジャパン体制である。そうした国家の舵取り体制構築の元年としてほしい。
